他人の評価はあてにならない。70〜80点を目指そう
──例えば、空気を読みすぎて、他の人を優先してしまうタイプは、どうしたら自分を守れるでしょうか?
「なぜ、周りに気を遣ってしまうのか。その根本を自分なりに振り返る必要はありますが……。例えば、そういうタイプの人は、もめごとが嫌だとか、自分のやりたい方向性が明確じゃないとか、理由はいろいろあると思います。
まず肝に銘じてほしいのは、“人生の主人公は自分だ”ということです。それが認識できれば、無理してほかを引き立てたり、必要以上に他人に気を遣ったりすることはなくなるように思います。もちろん組織の中で仕事をしている以上は、その組織の目標を達成しなければいけませんし、組織の中で達成すべき自分の目標もあるはずです。
組織の目標や自身の目標を達成するために、どんな行動をとるべきなのかを日々考えていれば、他人の手助けや助言が、自分自身や自分の仕事にとってプラスになるものなのか、マイナスになるのかが、はっきりと見えてくるはずです。プラスなことであれば取り組めばいいし、マイナスになるようなら、冷たい言い方になりますが、切り捨てるぐらいの気持ちで接したほうがいいと思います。
なぜ、そのように考えるのかというと、自分が倒れることが組織や家族にとって、一番の痛手になるからです。自衛隊では“我(われ)の健在”という考えがあります。これは“最後まで生き残ること”を意味します。
目の前の仕事は終わっても、次の仕事がどんどんやってきて、こなしていかなければなりませんので、自分が疲弊することは最小限に抑える必要があります。それを念頭に置くことができれば、自分に関係ないことは自然と切れるようになってくるはずです」
──周りを見ていると、頑張すぎてしまう真面目な人ほど、メンタルダウンを起こしてしまう傾向があるように思います。そんな人は、どのように考え方を変えればいいでしょうか?
「こういうタイプの人は“完璧主義”な傾向があるかもしれませんが……。ひとつ言えることは、何事も100点満点を求めすぎないことです。同じ仕事をしていても、100点をくれる人もいれば、40点しか評価してもらえない人もいます。適当にやったことを、ものすごく高い評価でつけてくれるときもあります。
どれだけ頑張っても、100点を維持し続けることは難しいということです。それなのに、歯を食いしばって満点を目指すのは、メンタルを壊すだけです。70〜80点を目指すぐらいが、息長く仕事を続けるためには、大事なことだと思います」
心を落ち着けるために、新たに始めた習慣とは?
──最後の質問です。メンタルダウンしてから、自分の気持ちを整えるために、新たに始めた習慣などはありますか?
「出社前と退社後に、必ず毎日やっていることに“お寺参り”があります。近くのお寺に出世地蔵と千手観音像があるので、出社前はその2体に“今日も頑張ります”、退社後は“今日も何事もなかったです。ありがとうございました”と手を合わせて、報告しています。
自宅に仕事を持ち帰りたくないので、仏さんに1日のことをお伝えして、気持ちを整理するようにしています。このおかげがどうかわからないですが、いまの仕事は人間関係に恵まれて、評価もされています。それに『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術 』も多くの人に読まれていて、ありがたい限りです。
ひとりになって、自分の気持ちを振り返る時間をつくることで、オンとオフを切り替えられるようになりました。リフレッシュできていないなと思う人は、ぜひ試しにやってみてください」
(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)