『らんまん』第17週、万太郎(神木隆之介)は水生植物のムジナモを見つけた。それは「アルドロヴァンダ・ヴェシクローサ」という植物で、日本で見つかったとすれば大発見──そう指摘したのは教授の田邊(要潤)で、万太郎に論文を書くよう命じた。万太郎は論文と植物画を完成させ「植物学雑誌」に掲載、それを見た田邊はこう言う。「今後、わが東京大学植物学教室への出入りを禁ずる」。まさかの出禁宣告だった。
理由は「名前」だ。採取したのは万太郎だが、研究が始まったのは田邊の指摘から。が、万太郎、論文に田邊の名前を載せなかった。大窪(今野浩喜)は「田邊との共著」とすべきだったと叱責した。それが正解かはわからない。が、執筆にあたり、万太郎が教授への「気遣い」らしきものを示していたら、出禁までにはならなかったのではないだろうか。が、万太郎、そういう世界には住んでいない。
万太郎の本質を言い当てていたのが、画工の野宮(亀田佳明)だ。「あの人は裏表のない、無邪気で無知な人なんです。私も教師をしていたのでわかります。そういう子ほど、可愛い」。万太郎は無邪気で無知で可愛い子どもだから、論文執筆にこぎつけた。同じ理由で、出禁になってしまった。
出禁より気になったことが別にあった。17週の最後、寿恵子(浜辺美波)が田邊の妻・聡子(中田青渚)に会いに行ったのだ。田邊家の門の前まで行ったのに、そのまま帰ってしまう。それぞれの「小さな不幸せ」の予感というか雰囲気というか、そんなものが漂っていた。ほろ苦さが残る、不思議なシーンだった。