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若い世代や海外からも注目されている昭和ポップス。本連載では、'80年代をメインに活動したアイドルの『Spotify』における再生回数と当時のCD売り上げをランキング化! データから過去・現在のヒット曲を見つめ、さらに、今後伸びそうな“未来のヒット曲”へとつながるような考察を、歌い手本人や関係者への取材を交えながら展開します♪

音楽

「Winkは強い女性たちが台頭する90年代にその逆をいかせた」及川眠子が明かす、作詞の世界観

SNSでの感想
及川さん。穏やかな口調ながらも、発言からは芯の強さが感じられた 撮影/山田智絵
目次
  • ペンネームの由来は? 作詞家デビュー後も会社員を兼業
  • 「Sexy Music」はカップリングに力を入れていた
  • 「ニュー・ムーンに逢いましょう」は集大成のつもりが……
  • 「一度世に出た作品は世の中のものだと思っています」
  • 及川のイチオシ曲は、広谷順子とのタッグで誕生
What's「未来へつなぐ昭和ポップス」?

 今、若い世代からも、また海外からも熱い注目を浴びている昭和ポップス。昨今では、音楽を聴く手段としてサブスクリプションサービス(以下「サブスク」)がメインで使われているが、必ずしも当時ヒットした楽曲だけが大量に再生されているわけではなく、配信を通して新たなヒットが生まれていることも少なくない。

 そこで、本企画では1980年代をメインに活動した歌手・アイドルの『Spotify』(2023年3月時点で4億8900人超の月間アクティブユーザーを抱える、世界最大手の音楽ストリーミングサービス)における楽曲ごとの再生回数をランキング化。当時のCD売り上げランキングと比べながら過去・現在のヒット曲を見つめ、さらに、今後伸びそうな“未来のヒット曲”へとつながるような考察を、本人または昭和ポップス関係者への取材を交えながら進めていく。

 今回もWinkにスポットを当て、Spotifyにおける人気曲の大半の作詞を手がけた及川眠子(おいかわ・ねこ)とともにその楽曲をたどっていく。前回は、オリジナル曲「淋しい熱帯魚」と海外のカバー曲「愛が止まらない」(どちらも及川が作詞)が2大ヒットでありながら、及川の印税収入が両者でまったく異なることや、意外なヒット曲が多数出ていることについて考察した。

(インタビュー第1弾→Wink「淋しい熱帯魚」は「若者にハロウィンの歌だと勘違いされている」作詞家・及川眠子が語る制作秘話

 今回は4位以下をさらに掘り下げていきたい。その前に、及川が作詞家となり、Winkを担当するまでの道のりを振り返ってもらった。

ペンネームの由来は? 作詞家デビュー後も会社員を兼業

 まずは、初見では読めないであろうペンネームについて尋ねた。

「ペンネームの由来は、本名の画数が多いので一筆書きのような苗字にしたかったのがひとつ。“眠子”というのは、吉田美奈子さんの『ねこ』という楽曲に出てくる当て字から拾ったんです。“これ、なんて読むんですか?”って尋ねられて“ねこです”と答えたら覚えてくれるだろうな、と思って名づけました」

 そういえば、'21年に高橋洋子が、及川が作詞した「残酷な天使のテーゼ」を“にゃ”だけで歌った「にゃん酷なにゃんこのテーゼ」が話題となったが……。

「あれは、私が“(及川)ねこ”だからと言って、“にゃにゃにゃ”と歌うように(高橋さんに)指示したのかと勘違いする人もいるようですね。でも、印税はちゃんと私に入りますから、ありがたいです(笑)」

 及川は'85年に、車のPRソングの歌詞を募集するコンテストで最優秀賞となり、同年末に和田加奈子が歌う「パッシング・スルー」で作詞家デビュー(補作詞:秋元康)。'87年には、おニャン子クラブのメンバーだった、ゆうゆ の2ndシングル「-3℃」の作詞を担当し、いきなりオリコン2位となっている。

「『-3℃』はポニーキャニオンのディレクターからの依頼ですね。最初、中山秀征くんのアルバム曲の歌詞を書かせてもらって、中山くんを担当していた渡辺音楽出版の方から、チェッカーズや ゆうゆ を担当していた吉田就彦さんをご紹介いただいたんです。“君は突き詰めて書くタイプだから、アイドルの作詞はやりたくないだろうけど、アイドル全盛期だし経験を積んでおいたほうがいい。彼女だったら必ず上位に入るだろうし、その実績も作っておくべきだ”と。そういった周囲の親心から、仕事が増えていったんです

 その実績が、大地真央のアルバムを全曲担当することにつながり、さらに、その出版権を所有していたフジパシフィック音楽出版からの誘いで及川も同出版に所属することになった。それが、同所属と関係の深いWinkのメイン作家へとつながっている。

「大地さんのアルバムには、松本俊明、中崎英也、小森田実、八田雅弘の4人の作曲家が参加していて、その縁から池田聡さんや、安室ちゃんがいたSUPER MONKEY'S、(やしき)たかじんの仕事を振ってもらって、いい曲がたくさんできているんですよ。それまで作詞の仕事以外で週3日くらい働いていましたが、ここに所属して作詞家1本に絞りました」

才能、人脈どちらも味方につけ、あっという間に人気作家となった及川さん 撮影/山田智絵
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